生活保護を申請すると、親族からの援助の有無を確認するために扶養照会が行われます。親族からの援助は生活保護の支給よりも優先されるため、扶養照会は原則必ず行われる手続きです。
しかし、申請者にとっては親族に生活保護申請の事実を知られたくなく、照会される親族にとっても援助をしたくない場合は多いため、「扶養照会の断り方を知りたい」という声が申請者・親族の双方から上がっています。
そこで本記事では、生活保護申請時の扶養照会を拒否する方法を、申請者・親族のそれぞれの視点から解説します。扶養照会の通知がある範囲や扶養義務の有無、親族の資産調査が行われるのかなどについても触れるので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
これを読めば、扶養照会を拒否する方法が理解でき、親族にバレる心配をせずに生活保護を申請するためのヒントが得られますよ。
目次
生活保護申請時の扶養照会とは?
生活保護申請時の扶養照会とは、申請者の親族に対して援助ができないかどうかを確認する手続きです。生活保護の受給条件には、「親族からの援助が見込めない」というものがあります。そのため、親族に援助の可否を確認するための扶養照会は、原則必ず行われる手続きです。
そもそも生活保護とは、他方からの援助が期待できず生活が困窮している人を支援する制度です。したがって、親族からの支援は生活保護よりも優先されます。また、親族の援助を受けながら生活保護を不正受給するといった形を防ぐためにも、扶養照会は必要な手続きだといえるでしょう。
扶養照会が通知される範囲は、三親等(曾祖父母・おじ・おば・甥・姪)までです。対象者には、精神的・経済的に申請者を援助できるかどうかと、対象者自身の収入を記載する書類が届きます。対象者は書類に必要情報を記載のうえ返送し、援助の可否を回答するというのが扶養照会の流れです。
扶養照会をせずに生活保護を申請できるケースと断り方
扶養照会をすると三親等までの親族に生活保護を申請した事実が知られてしまいます。これが理由で、生活保護の申請を躊躇している人もいますが、場合によっては扶養照会自体を断ることも可能です。
基本的には、「扶養照会の実施が適切ではないこと」「扶養義務の履行が期待できないこと」のどちらかを説明できれば、扶養照会を拒否できます。具体的なケースを確認しておきましょう。
参考:厚生労働省 「生活保護問答集について」の一部改正
親族からDVや虐待などの被害を受けていた場合
親族からDVや虐待などの被害を受けていた場合、扶養照会を断ることができます。扶養照会をすることで申請者の居住地などがバレてしまい、被害にあってしまう可能性があるためです。この場合は、担当ケースワーカーにその旨を伝え、扶養照会を行わないように相談しましょう。
関係が破綻しており援助が期待できない場合
長期間音信不通で、親族との関係が破綻している場合も扶養照会が行われないケースがあります。このケースはすでに親族としての関係性になく、「扶養義務の履行が期待できない」と判断されるためです。生活保護申請時に親族との関係性を丁寧に伝え、援助が期待できないことを理解してもらいましょう。
金銭問題でのトラブルを抱えている場合
親族から借金をしていたり相続などで対立していたりする場合も、扶養照会を拒否できる可能性があります。金銭問題を抱える親族に生活保護の申請が知られることで、新たなトラブルに巻き込まれる可能性があるためです。
担当ケースワーカーにトラブルの内容や事情を説明し、扶養照会を断れないか相談してみましょう。
親族向け|扶養照会で確認されること
扶養照会を受ける親族が確認されるのは、大きく以下の3つです。
- 精神的な支援の可否
- 金銭的な支援の可否
- 自身の収入
精神的な支援とは、定期的に声をかけたり相談に乗ったりといった金銭以外の支援を指します。金銭的な支援とは、文字通り仕送りなどの援助のことです。収入は自己申告の金額でよく、別途調査されるようなことはありません。回答したくない場合は、無記入でも問題ありません。
親族向け|扶養照会で援助可否を問われたときの断り方
扶養照会で援助を問われたときの断り方を紹介します。大前提として、親族だからといって生活保護申請者を援助することは強制されません。自身の生活を考えた上で、「援助できる」「援助したい」と考えた場合以外は、援助を断ることができます。
金銭的な理由で援助が難しいと伝える
経済的に援助が難しい場合は、その旨を記入して返送しましょう。収入などが無記入であっても、本当に援助ができないのかを調査されることはありません。
なお、経済的に余裕がないにもかかわらず援助できると回答する方が問題です。結果的に申請者は生活保護を受給できず十分な援助も受けられないうえ、扶養する親族自身の生活まで困窮してしまいます。親族だからといって援助を強制されることはないため、無理をせず援助を断りましょう。
関係が破綻しているため扶養したくないと回答する
経済的に余裕があったとしても、関係が破綻している親族を扶養する必要はありません。その旨記載のうえ、書類を返送しましょう。また、関係が破綻しておらず経済的に援助できる可能性があったとしても、「援助したくない」と思えば援助を拒否できます。
回答せずに扶養照会を無視する
扶養照会は回答自体が義務ではないため、無視していれば「援助は期待できない」と判断されます。無視したからといってペナルティはありません。
ただし、扶養照会の回答がないと親族の援助可否の確認に時間がかかるため、生活保護の支給が遅くなる可能性があります。申請者のことを考えると、援助しない場合でも早めに回答するのが理想です。
生活保護の受給条件
生活保護の受給にはいくつか条件があります。受給条件に当てはまっているか確認してみましょう。
月の世帯収入が最低生活費を下回っている
最も重視される受給条件は、月の世帯収入が最低生活費を下回っていることです。最低生活費とは、健康で文化的な最低限度の生活に必要な生活費のことで、生活保護制度はこれを保障するために存在します。
最低生活費は、同居している家族の年齢・世帯人数・居住地域によって異なります。最低生活費の計算方法は以下のとおりです。
最低生活費=生活扶助+住宅扶助+教育扶助+介護扶助+医療扶助
生活扶助と住宅扶助の基準額は、年齢・居住地域によって異なります。居住地域は1級地-1〜3級地-2まで6段階に別れており、その地域での生活に必要な額で基準額が定められているため、確認しておきましょう。級地区分は厚生労働省の公式サイトで確認できます。
最低生活費や生活保護の支給額については次の記事で解説しています。詳しく知りたい場合は参考にしてみてください。
扶養照会により親族からの援助が得られないことがわかった
親族からの援助が得られないことも、生活保護の受給条件のひとつです。援助の可否は扶養照会によって確認されます。三親等までの親族に援助の可否を問い、援助が見込めない場合には生活保護を受給できる可能性があります。
病気やケガなどで働けない
病気やケガなど何らかの原因で働けない人も、生活保護の対象です。うつ病などの精神疾患も対象ですが、自己申告だけでは認めてもらえない可能性もあるため病院での診断書を用意しておきましょう。日々の症状を記録した日記や、ケガの状態そのものをケースワーカーに見てもらうのも方法のひとつです。
65歳以上の場合、働けるかどうかは基準から除外されます。また、働いていたとしても、収入が最低生活費を下回っていれば受給対象です。
預貯金や土地などの資産を保有していない
十分な貯金があると生活保護の受給はできません。持っていてもよい預貯金の目安は、最低生活費の半額以下です。
土地などの資産を持っていると、売却して生活費に充てられると判断され、生活保護を受給できないケースがあります。持ち家・車・PC・スマホなど、場合によっては所有が許可されるものについては、以下の記事で解説しているのでチェックしてみてください。
公的融資制度を利用したことがある
生活保護以外にも、困窮者の救済を目的とした、国から生活費を借りられる公的融資制度が存在します。生活保護の受給できるのは、公的融資制度を利用した(利用を検討した)がそれでも困窮状態が解消しなかった世帯です。まずは、公的融資制度が利用できないか検討してみるのもよいでしょう。
公的融資制度の例 | ||
---|---|---|
公的融資制度名 | 対象者 | 申請・相談先 |
生活福祉資金貸付制度 | 生活困窮世帯 | 福祉事務所 |
求職者支援資金融資 | ハローワークでの職業訓練を受講中の人 | ハローワーク |
母子父子寡婦福祉資金貸付金 | 20歳未満の子を持つひとり親 | 福祉事務所 |
公的融資制度も生活保護と同じように福祉事務所で相談できるものがあります。よくわからないときは、福祉事務所に問い合わせてみてください。
生活保護の申請方法
生活保護の申請方法を解説します。生活保護の申請手順は以下のとおりです。
生活保護を受給するまでの流れ
- 申請に必要な書類をできるだけ準備する
- 福祉事務所に事前に相談する
- 福祉事務所で生活保護を申請する
- 受給に必要な調査を受ける
- 生活保護を受給する
申請に必要な書類をできるだけ準備する
生活保護の申請には、いくつかの書類提出が必要です。生活保護申請書や各種申告書などは福祉事務所に置いてあるため、福祉事務所に行ったときに記入すればよいでしょう。一方、申請書・申告書の記入や申請に必要な以下の書類などは、事前に用意しておくと手続きがスムーズです。
事前に用意しておくとよいもの
- 賃貸借契約書
- 通帳
- 印鑑
- 本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)
- 給与明細など収入がわかるもの
なお、事前に用意できない場合は無理に揃える必要はありません。用意できるものだけを持参して、福祉事務所に相談に行きましょう。
福祉事務所に事前に相談する
住んでいる地域の福祉事務所(生活相談などの窓口)に行き、生活保護を受給したい旨を相談しましょう。担当者が経済状況や就労状況などについてヒアリングを行い、生活保護が必要かどうかを判断します。生活保護が必要だと判断されたら、その場で申請書などを記入して申請が可能です。
なお、住む場所がなくても生活保護の申請は可能です。現在いる場所から近い福祉事務所に相談に行きましょう。
各都道府県の福祉事務所は厚生労働省の公式サイトで確認できるため、最寄りの福祉事務所の場所を確認しておきましょう。窓口の受付時間は福祉事務所によって異なりますが、平日の8:30〜17:30前後としている場合が一般的です。
福祉事務所で生活保護を申請する
福祉事務所で生活保護の受給を申請します。生活保護申請書や、資産・収入などの申告書を記入して提出しましょう。福祉事務所内で記入できるので、わからない場合は担当者に質問しながら記入してください。
受給に必要な調査を受ける
申請が完了すると、生活保護の受給条件を満たしているかの調査が始まります。
まず、申請から1週間以内を目安にケースワーカーによる家庭訪問を受けましょう。ケースワーカーとは、生活に困っている人を支援するのが仕事の公務員のことです。家庭訪問では、住居の状態や世帯人数、売却できる資産がないかどうかなどがチェックされます。
家庭訪問と同時に、扶養調査も実施されます。住民票や戸籍謄本から親族を調査し、援助を受けられる可能性がないか調べるのが扶養調査です。さらに、金融機関などの残高照会により、預貯金や借入金がないかどうかも確認されます。
生活保護を受給する
生活保護を受給できるかどうかの結果は、申請から14日以内を目安に通知されます。自宅に届く保護決定通知書または保護却下通知書を確認しましょう。
無事に生活保護を受けられる場合は、保護決定通知書が届きます。通知書には、保護が決定した理由や支給額などが記載されているためチェックしておきましょう。初回は生活保護の受給が決まった日に手渡しでの支給です。その後は、直近の支給日から口座振込での生活保護の支給がはじまります。
支給が開始した後も、毎月ケースワーカーに収入を報告するなどの義務が発生します。何をしたらよいのかは、担当のケースワーカーの指示に従ってください。
生活保護の扶養照会に関するよくある質問
生活保護の扶養照会に関するよくある質問とその回答を紹介します。
生活保護申請者の親族には扶養義務がある?
生活保護申請者の親族には扶養義務があります。ただこれは、生活保護よりも親族からの援助を優先するという意味で、親族だからといって援助を強制されるわけではありません。
「経済的に援助は難しい」「すでに親族としての関係性は破綻している」といった場合はもちろん、単に援助したくないという理由でも、申請者の援助を拒否することができます。
申請者の兄弟や孫でも扶養照会を拒否できる?
生活保護申請者の兄弟や孫なども、扶養照会を拒否可能です。「生活保護申請者の親族には扶養義務がある?」の回答と同じように、援助が難しい場合は拒否しても問題ありません。
扶養照会の拒否理由は明確に回答する必要がある?
扶養照会の拒否理由は、必ずしも明確に回答する必要はありません。援助を拒否したからといってしつこく理由を問われることはないため、援助できない旨を伝えるだけでも問題ないでしょう。
扶養照会に返信しないとどうなる?
扶養照会に返信しない場合、福祉事務所から援助は期待できないと判断されます。返信は強制ではないため、特にペナルティなどもありません。
ただし、返信がないぶん親族からの援助有無の確認に時間がかかるため、生活保護の支給が遅くなる可能性があります。援助を断る場合であっても、早めに返信した方が申請者の助けとなるでしょう。
扶養照会を受けると年収などを調査される?
扶養照会を受けても年収などを調査されることはありません。収入調査の書類は届くものの、記載する収入は自己申告でOKです。記載したくない場合は、回答しなくても問題ありません。
生活保護受給中のスマホはサンシスコンがおすすめ
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